土壌汚染が私たちにどのように影響するのか。そして対策方法は。

土壌汚染の影響

土壌汚染とは土壌中に含まれる有害物質の濃度が、人間の健康や環境に悪影響を及ぼすレベルに達している状態を指します。土壌汚染対策法では、26種類の特定有害物質(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ベンゼン、鉛、ヒ素、六価クロム、水銀、カドミウムなど)が定められています。

土壌汚染は、人間の活動が主な原因ですが、自然由来の汚染も含まれます。

人間活動由来の土壌汚染の主な原因は以下のようなものです。

 

・工場などで使用する有害物質が誤って土壌に漏れ出す

・有害物質を含んだ廃棄物が正しく土に埋められず、雨水によって土壌へ溶け出す

・排気ガスや飛灰に含まれる有害な物質が土壌へ降り積もる

・有害物質が土壌に溶け出し、そのまま地下水にも溶け出す

 

これらによって引き起こされた土壌汚染は、通常目に見えないため、調査をしないとどれくらいの濃度の汚染物質が存在し、どのような影響を与えるのかがわかりません。また、有害物質の多くは、年月が経っても長期にわたって残存し続け、影響が残ることも問題です。そして、有害物質が地下水に溶け出すと、私たちの健康などに影響が及ぶ可能性もあります。

 

それでは土壌汚染による影響には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

 

〇健康被害

土壌中の有害物質は直接摂取・間接摂取の2種類の経路で人に健康被害を及ぼします。

①直接摂取

汚染土壌の直接接触、汚染土壌の飛散、汚染土壌中の有害物質の揮散により口や鼻から人体に入る((土を食べたり、吸い込んだり)、皮膚から吸収されるなど

②間接摂取

雨などで土壌中の有害物質が地下水に流れ込み、その地下水を飲む(井戸水などを飲用に用いている場合)。また汚染土壌地で成育した農作物・家畜に有害物質が蓄積し、それを人が摂取するなど。

 

〇不動産取引への影響

汚染された土地は、時間がたっても、有害物質(=特定有害物質)が消えることが無いので、完全にきれいにしようとすると、浄化や除去が必要になってきます。

しかし、それにはコストがかかります。小規模で数百万~、大規模な浄化や除去になると数千万~という費用になってしまいます。この土壌汚染の浄化コストが、土地価格に反映されてしまうのです。

その結果、土地の売買が進まなかったり、開発計画が中止になったりして、経済的な損失が生じることがあります。

 

土壌汚染の対策方法

 対策方法は、大きく分けて2つあります。土壌に含まれる有害物質を除去する方法と、汚染された土壌に触れることがないようにする(封じ込め)方法です。

 有害物質を除去する技術は、「掘削除去」と「原位置浄化」に大きく分けることができます。

 掘削除去では、汚染土壌は、土壌洗浄などにより汚染物質を除去して埋め戻される場合(オンサイト処理)と、管理型最終処分場などに場外処分される場合があります。

掘削せずに有害物質を除去する「原位置浄化」技術には、主に分解技術と抽出(除去)技術があります。分解技術は、有機汚染物質をCO2などの無害な形にまで分解する方法で、分解方法として酸化剤を使用する方法(酸化分解法)や、微生物の力を利用する方法(バイオレメディエーション)などがあります。

抽出技術は、有害物質を土壌から分離して取り除く方法です。土壌ガス吸引、地下水揚水、エアースパージングなどの方法があります。

汚染土壌を掘削せずに汚染の拡散を防ぐ対策として、汚染地下水を揚水したり、浄化壁を通過させ、地下水汚染を拡大させない方法があり、溶出量基準超過の場合には有効です。含有量基準超過の場合は、立ち入り禁止・舗装などにより汚染土壌に触れないようにすることで、健康被害を防ぐことができます。また、封じ込めの対策としては、汚染土壌を、遮水壁、難透水性地盤、舗装で封じ込め、土壌汚染を拡大させない方法(原位置封じ込め)があります。これらの方法は汚染物質は除去されずに残っているので、モニタリングを継続的に行うなどの管理が必要となります。

〇土壌汚染対策の現状と課題

 汚染土壌の人への摂取経路は、主に汚染土壌の直接摂取と汚染地下水の飲用摂取であることから、被覆や封じ込め等の残置型リスク管理措置でも人へ健康被害を防ぐことはできます。

 土壌汚染措置費用は、一般に汚染の掘削除去が最も高く、残地型リスク管理措置は掘削除去と比較して安価です。しかしながら、実際に土壌汚染が確認された場合、措置方法として80%を超えるサイトで汚染の除去、特に掘削除去が採用される結果になっています。

 汚染の掘削除去は、当該サイトの環境リスクを低減させ、かつ、不動産の価値を回復させます。しかしながら、一方で汚染土壌の掘削や搬出に伴うCO2排出量の増加、新規清浄土の使用量の増加、汚染土壌の処分先の残余量の減少、さらに汚染土壌の不適切な処理等による環境リスクの拡散など、サイト外部への環境負荷を増大させていることが懸念されています。

 人の健康被害を防止することは大前提です。しかし、その土地の立地条件、汚染状況、経済情勢によって、土壌汚染問題をどのように解決方法が考えられるのか、考えていくべきではないかでしょうか。

オンライン相談はこちら