重金属による土壌汚染 ~人為由来と自然由来、対策技術など~

①重金属とは

 重金属等は比重が5.0以上、あるいは4.0以上の金属のことで、自然界にも存在するものです。

土壌汚染対策法で特定有害物質に指定されている重金属等は、カドミウム・六価クロム・シアン・総水銀・アルキル水銀・セレン・鉛・ヒ素・フッ素・ホウ素の9項目になります。

重金属は、イオンとして溶け出し、土壌や動植物の組織内に蓄積される特性があります。

そのため、 工場や鉱山、産業廃棄物などから排出される重金属が、水源や土壌などに蓄積し、人が摂取することによって人体に影響が発生します。

実際に健康被害が出た事例として、水銀化合物による水俣病やカドミウムによるイタイイタイ病が有名です。

 

 重金属の用途

 

②自然由来の土壌汚染

 重金属等はそもそも自然界に存在するものであり、人の体内にも微量に存在します。その存在が必ずしも「悪」というわけではありません。自然の岩石や堆積物中に砒素、鉛、フッ素、ほう素、水銀、カドミウム、セレン又は六価クロムおよびそれらの化合物が存在し、それらが土壌汚染調査により環境基準値を超える濃度で検出されることがあります。このようなもともとの地層に含まれる重金属類による土壌汚染は、事業活動に起因する人為由来の汚染と区別されます。

 形質変更時要届出区域のうち自然的条件からみて基準に適合しない土地は、自然由来特例区域となります。

 人為的な汚染なのか自然由来なのかは、以下のような条件に当てはまるかどうかを定性的・定量的に調査し、判断していきます。

・土地の履歴

・周辺地域に同様な事例があるか

・周辺の地質的な状況、海域との関係等

・土壌溶出量が土壌溶出量基準の10倍を超えないこと

・土壌含有量が自然的レベルの範囲の目安値の範囲内にあること

 

    以前は、自然由来の汚染は土壌汚染対策法の規制の対象外とされていました。しかし、健康被害防止の観点から、自然的原因により有害物質が含まれる土壌とそれ以外の汚染土壌とを区別する理由がないため、2010年4月に土壌汚染対策法が改正され、自然由来の土壌汚染も法の対象となりました。そのため、適切な管理が求められるようになり、場合によっては、汚染物質の拡散防止対策が必要となります。

 

③対策技術

重金属の対策技術としては、恒久的なものとして掘削除去があります。そのほか、地下水揚水、原位置封じ込め、透過性地下水浄化壁、洗浄処理、不溶化処理など多種の対策技術が存在します。

「掘削除去」は汚染土壌を削り取り除去する方法で、多くの場合に採用される浄化方法です。掘削後は埋め立て処分されたり、その他処理方法(洗浄、セメント化等)にて処理されます。

一方、不溶化処理は汚染土壌に不溶化材を混合することにより汚染物質の性状を変え、有害な物質が水に溶け出さないようにする方法です。有害物質は除去されないため、不溶化後も溶出していないかを定期的に測定する必要があります。

重金属等は自然界に存在する元素であるため、第一種特定有害物質(VOC)等と異なり、分解は難しいとされています。ただし、シアン化合物による汚染については、化学的分解あるいは微生物分解により無害化する技術があります。

そのほかの技術としては、比較的汚染濃度の高い細かい土粒子のみを分離させること(分級)により汚染物質を取り除く分級洗浄処理があります。

 

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