土壌汚染リスクの高い土地とは~病院跡地の土壌汚染調査

 土壌汚染リスクの高い土地といえば、ガソリンスタンドや、大規模な工場などを思い浮かべる人も多いかと思います。しかし、それ以外にも様々な業種で土壌汚染リスクがあり得ます。そして、業種によってリスクが高い特定有害物質は、さまざまです。 過去に病院であった土地も、土壌汚染のリスクが比較的高いといえます。

①病院跡地の土壌汚染リスク

病院が廃業したり、移転した後の土地では、土壌汚染調査が必要となることがあります。

病院跡地であれば必ず土壌汚染が発覚するというわけではありませんが、廃棄物について非常に厳格なルールが定められている現在とは違い、昔は有害物質が垂れ流しに近い形で廃棄されていたり、排水の処理も適切にされていなかったということがあり得ます。そのため、古くから病院があった土地は、そのような経緯で有害物質が土壌に浸透している可能性があります。

 

②土壌汚染調査が必要なケース

 病院跡地で土壌汚染調査が求められるケースとして、以下が考えられます。

・特定施設の廃止を契機に調査義務が発生する場合

 →病院を廃止するにあたって、病院にあった有害物質を使用する特定施設(「有害物質使用特定施設」という)を廃止する手続きをすると、その敷地である土地の土地所有者等に、廃止の日から120日以内に、土壌汚染状況調査を行い知事へ報告する義務が生じます。

 

・病棟の建て替え工事により、3000㎡以上の土地の形質変更が行われる場合

 →建物の建て替えや新築に伴い、土地の形質の変更をしようとする場合、形質変更する面積が3000㎡以上(有害物質を使用する特定施設が設置されている事業所の場合には900㎡以上)のときには、形質変更を行う方は着手日の30日前までに、当該形質の変更をしようとする土地の所在地等を知事に届け出なければなりません(法第4条第1項)。届け出があると、都道府県知事等は、届出のなされた土地において土壌汚染のおそれがあると判断する場合には、土地所有者等に対し、土壌汚染状況調査の実施及びその結果の報告を命じることができます(法第4条第2項)。

 

病院は、土地の売買に際して、土壌汚染対策が重要視される業種の一つです。

たとえ先に示したような法的な調査の義務がなくても、過去に「病院」として使われていた土地は、適切な土壌汚染調査・対策を行うことが求められます。

 

③使用されている可能性のある特定有害物質

 病院で使用されている可能性がある特定有害物質は以下のようなものがあります。

 ・水銀:電子式でない体温計や血圧計には水銀が使われています。使われなくなったり壊れてしまったりしたこれらの機器を保管したり廃棄するときに、適切な方法でなされていないと有害物質が漏洩し、そこから土壌が汚染される可能性があります。

・ふっ素、ほう素の化合物:レントゲンの現像液に含まれている可能性があります。

・ジクロロメタン:麻酔剤に使用されていました。

・六価クロム:菌の染色、培養などに使用されていました。

・シアン化合物:血液検査用の試薬の成分として含有されていることがあります。

  これらの試薬等が排水の中に混入し配管の継ぎ目や亀裂から漏洩したり、不適切な廃棄方法により地下浸透することで、土壌汚染が発生する可能性があります。

 病院跡地の土壌汚染調査では、これらの物質の使用状況についてヒアリングなどを実施し、注意深く調べる必要があります。

 

 以上、病院跡地における土壌汚染調査について紹介しました。

 病院では特定有害物質を使用している可能性が高く、地歴調査(書類だけの調査)だけで終わらず、土壌を採取しての調査(状況調査)に進むケースが多くなり、調査に時間がかかることも想定されます。土壌汚染が発覚した場合には、詳細調査やその後の浄化工事などに年単位で時間がかかることもあります。病院跡地を売買する場合などには、このようなことも頭に入れておく必要があります。

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