土壌汚染問題の実際の事例を知る 

数年前に発生した東京都江東区の「豊洲市場」での土壌・水質汚染に関連したニュースが大きな注目を集めましたが、それ以外にも全国で土壌汚染問題が発生し、ニュースとして取り上げられています。

工場跡地などの再開発や土地の取引などに伴い、土壌汚染調査を行うのが一般化していることから、近年多くの土壌汚染問題が顕在化しています。

 

では、実際には土壌汚染はどのような場所で発覚し、問題をどのようにして解決しているのか、弊社の調査実績の中から事例を紹介したいと思います。

 

事例①ガソリンスタンド跡地

 土地の履歴:ガソリンスタンド→廃止後、更地

 面積:約1000㎡

 設備:地下タンク、廃油置場

<調査内容と経過>

 過去にガソリンスタンドが立地した土地は、事業活動に伴い特定有害物質(ベンゼン・鉛)及び鉱油類の使用等が推測される。よって、最初の土壌ガス調査では第1種特定有害物質のベンゼン、鉱油類の指標となるトルエン・キシレン・エチルベンゼンを対象物質とし、汚染源を特定するため対象地全体に網羅的に調査地点を配置した。

 その結果、敷地全体に土壌ガス検出箇所が点在していたことから、新規建物の建設予定範囲(土壌の掘削が予定されている範囲)に絞って追加のボーリング調査を行い、油の土壌への浸透状況を確認するとともに、地下水の状況も調査することになった。

 敷地内数か所でボーリング調査を行ったところ、東側のり面付近に1000mg/kgを超える油分(n-ヘキサン抽出物質)を含有する土壌が分布している可能性が推測された。

今後の対応としては、新築工事の際に油の浸透が確認された土壌を掘削・移動したり場外へ搬出する場合には、油臭対策や搬出土壌の適切な管理を行いながら実施することとなった。

 

事例②病院

 土地の履歴:昭和50年代から病院敷地

面積:約100000㎡、うち解体による形質変更面積5000㎡

設備:病院、その他施設

 <調査内容と経過>

  一定規模以上の土地の形質の変更を行う場合には、行政への届出が必要であることから、土地所有者が行う手続きを支援することから始まった。

  地歴調査において、検査室等での使用薬品、排水経路、廃棄物運搬の経路の把握などを行い、使用・貯蔵履歴が確認された特定有害物質19項目を選定した。

  また、選定した物質毎に形質変更範囲の「土壌  汚染のおそれの3区分(おそれ多い、少ない、ない)」及び「おそれの生じた場所の位置(地表面、地下配管底、ピット底等)」の把握を行った。

  その後の表層土壌調査は、既存病院の事業活動停止後、解体作業開始前の期間で行われた。その結果、1地点で鉛の土壌溶出量・土壌含有量基準不適合を確認した。

  深度調査を行うにあたり、病院1Fでボーリングが可能となるように、搬入口や天井の解体などの仮設工事を実施する必要があったため、発注者・解体業者と打ち合わせながら進めた。

  ボーリング調査の結果は、以下の通りであった。

    土壌:1.0mで基準不適合、2.0m以深はすべて基準適合

    地下水:基準適合

  調査の結果、対象地は形質変更時用届け出区域に指定された。依頼者は、掘削除去により指定区域の解除を行いたいと希望していたので、解体業者が解体工事と並行して掘削除去を実施した。

 

事例③クリーニング店

 土地の履歴:市街地の中のクリーニング工場→その後雑居ビルが立地

 面積:約600㎡

 設備:クリーニング店、法施行前に廃止されていたため、調査義務はなし

 

<調査内容と経過>

 マンション用地の購入を検討している土地について、過去にクリーニング店が立地していた履歴が確認されたため、自主的に土壌汚染調査を行うことになった。

 土壌ガス採取は25地点で行い、現地分析車による土壌ガス分析を約2日間かけて行ったところ、4地点(3単位区画)で土壌ガス(テトラクロロエチレン)が検出された。

 検出された単位区画のボーリング調査では、テトラクロロエチレン、分解生成物について、土壌・地下水への影響を調査した。その結果、2区画で基準値超過確認され、対策面積は120㎡、対策深度は4.0mまでと確定した。

 依頼者は汚染の浄化を希望したことから、化学酸化剤(フェントン反応剤)を用いた原位置の混合撹拌、及び注入による浄化が行われた。工事終了後、浄化完了確認のボーリング L=4.5m×2地点を行い、深度方向土壌分析・地下水分析を行ったところ、全深度で基準適合を確認した。

 

いかがでしたでしょうか。

土壌汚染は、私たちの身近にある施設でも発覚することがあります。

また、豊洲市場の土壌汚染問題のように、その時は何もなくても、数十年後に過去の事業活動による影響が出ることもあります。

 

汚染された土壌は、莫大なお金や年月をかけても、完璧に元通りになる保証はなく、簡単にはきれいにならないことが多いものです。しかし、そのまま放置すると環境や人体にも影響が出てしまう場合には、何らかの対策を行うことが必要なこともあります。近年では、掘削除去は環境負荷がかかるということで、汚染土壌を残したまま、周辺に影響が出ないよう適切に管理する対策がとられることもあります。

経済的な問題と環境や人体への影響、これらをよく把握したうえで、適切な対応が求められます。

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