地歴調査について
地歴調査とは
地歴調査は、土壌汚染調査の最初のステップです。
過去の土地利用履歴を資料等で確認し、使用されてきた特定有害物質の種類とその土地の汚染のおそれの可能性を評価する調査です。
今は工場や病院の土地でなくても、過去にどのような施設があり、どういった目的で使用されていたかは地歴を調べないと分かりません。過去の資料や、過去を知っている人を探して、過去の利用状況を確認していくことは時間や労力がかかることですが、地歴調査が不十分であると、次のステップに進んだ時により多くの調査が必要になってしまう場合もあるので、地歴調査は非常に重要です。
地歴調査の方法
登記簿謄本や住宅地図、公的資料や市販の資料などの書類や土地に関する情報を入手し、現地踏査やヒアリング調査などを行って、現在から過去にどんな事業所等があったか、そこでどんな汚染物質を使用し、汚染の可能性があるのかを調べます。
<地歴調査で収集する資料の例>
・土地の登記事項証明書(登記簿謄本)、公図
・都市計画図
・地形図・地盤図
・報道発表等
・環境報告書、CSR報告書、統合報告書
・過去に行われていた、調査・対策に関する資料
・特定有害物質の埋設・飛散の記録
・行政記録、被災記録
・廃棄物保管記録、マニフェスト
・取扱物質リスト、SDS
・施設構造図
・建物の竣工図
・汚水配管図・排水経路図
<現地踏査・ヒアリング調査>
現地踏査では、実際に対象の土地に入り、現在の利用状況や過去の利用の痕跡がないか等をチェックします。対象地内に不自然な盛土がないか、廃棄物が放置されていないかを見たり、汚水の排水経路などもこの時に確認します。
ヒアリング調査では、土地の所有者の方や、事業主の方などにお話を伺います。工場などでは、施設管理担当者、環境管理担当者、化学物質管理担当者などの特定有害物質の取扱や公害防止管理及び廃棄物管理の状況について詳しい方へのヒアリングが望ましいと考えられます。また、過去に工場で働いていた人を紹介いただいて、話を聞くこともあります。
地歴調査の目的
地歴調査により、土壌汚染の可能性を定性的に把握し、評価します。
地歴調査はあくまでも机上での資料調査なので、土を採取したり分析することはありません。対象地に実際に土壌汚染があるかどうかは、土壌ガスや土壌を採取・分析し、土壌汚染の実態把握を行うことで判明します(表層土壌調査、状況調査といいます)。
しかし、いきなり表層土壌調査に入ると、土壌汚染のおそれを適切に反映した調査計画が立てられないことがあります。なので、事前に地歴調査を行うて、土壌汚染の可能性が高い所を把握し、より適切な表層土壌調査の計画を立てることができます。
また、敷地面積が広大な工場の地歴調査の場合、工場敷地すべてが「土壌汚染のおそれが多い」と区分されるとは限りません。調査実施エリアや調査項目を絞り込むことで、費用を大きく低減させることも可能になります。
地歴調査は、効果的な表層土壌調査等の計画を立てるためにも大切なステップです。
法調査と自主調査の違い
土壌汚染対策法に基づく地歴調査は、一定の規模以上の土地の形質変更や、有害物質使用特定施設が廃止されたときに行うよう定められています。
具体的には、①試料採取等の対象とすべき特定有害物質の種類の特定(全26項目のうち、調査対象とする物質を絞り込み)②調査対象地の土壌汚染のおそれの区分の分類(調査対象地を10mメッシュ毎に“おそれ多い・少ない・ない”の3つに分類)を行います。
法調査では、地歴調査で使用等・貯蔵等が確認された物質のみを試料採取等の対象とします。
一方、土地の売買、資産評価などの際に行われている自主的な調査では、試料採取等の対象とすべき特定有害物質の種類を特定せず、全項目(農薬等を使用する可能性が低い場合には、第3種特定有害物質はPCBのみ)を分析対象とする場合が多いです。また、特定有害物質に加えて、鉱油類やダイオキシン類も調査対象物質とし、周辺地からの地下水を経由したもらい汚染の評価を追加することが一般的です。