鉱油類による土壌汚染の実態と対策

  • 鉱油類とは

鉱油類は、石油(原油)、天然ガス、石炭など地下資源由来の炭化水素化合物もしくは不純物をも含んだ混合物の総称です。

ストーブに使う灯油や、自動車の燃料になるガソリンなどは私たちの生活に身近なものです。

ほかに、軽油、重油などの燃料油、機械油、切削油の潤滑油など、広く工業製品等に用いられています。

 

  • 土壌に浸透するとどうなる?

 ガソリンスタンド、貯油タンク、工場などは、土壌汚染が発生する危険性の高い場所です。

ガソリンスタンドの場合は、地下にタンクを設けていることが多いのですが、老朽化などが原因で油がもれ、土に浸透する可能性があります。

工場では、ボイラー用の重油、部品の切削油、機械の潤滑油などの漏洩により、土壌に浸透する可能性が考えられます。

 油が地下水のところまで到達すると、地下水が汚染されます。

基本的に油は水よりも軽いので、地下水面に到達すると、広域に汚染される可能性があります。

また、地下水は季節によって上下するため、地下水位の上下の土壌が帯状に汚染されます。

 

  • 油汚染ガイドラインとは

 土壌汚染対策法における特定有害物質に油という項目は規定されていません。そこで、油汚染対策の指針となっているのが、環境省が発行する「油汚染対策ガイドライン-鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題への土地所有者等による対応の考え方-」(以下、「油汚染ガイドライン」とする)です。鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題に対し、土地所有者等がどのような対応をするべきか、考え方が示されています。

「油汚染ガイドライン」では、油汚染対策の目的を「生活環境保全上の支障を除去すること」としています。油汚染の対象物質は、鉱油類:ガソリン、灯油、軽油、重油などの燃料油、機械油、切削油の潤滑油などです。

土地所有者などが土壌・地下水の油膜を発見あるいは油臭を感知した時や、周辺の土地または井戸水に油臭・油膜が生じ、その原因が所有する土地の油含有土壌であると確認した場合などが調査のきっかけとなります。

「油汚染」の評価は、個別の土地ごとに、人の感覚を用いた試験方法で油臭・油膜を判断し、定量的な判断方法としては、TPH(Total Petroleum Hydrocarbon:全石油系炭化水素)を用います。TPHについては、「油汚染土壌に起因する油臭や油膜の把握は、嗅覚や視覚といった人の感覚をおおもととする」が、それらを保管し関係者の共通の理解を得るための手段としてTPH濃度を用いることにする」と説明されています。

TPHの濃度がどれくらいだったら対策が必要なのでしょうか?一般的には1000mg/kgという値を基準にすることが多いようです。これは、ガソリンスタンドにおける土壌汚染調査において、石油業界が基準としている濃度であるということです。

 

  • どんな対策技術がある?

油汚染された土壌や地下水を浄化する方法の代表的なものは、汚染された土壌を掘り返してきれいな土と入れ替える方法と、浄化剤を地中に注入する方法です。

浄化剤を土地にまいたり地中に注入したりして浄化する方法として、酸化剤を用いる方法とバイオレメディエーションがあります。

 

・酸化剤での油浄化

 汚染範囲に酸化剤を注入して油を化学的に酸化分解します。比較的短期間で浄化できます。

 過酸化水素から生成するヒドロキシラジカル(▪OH)を用いたフェントン法や過硫酸塩から生成する硫酸ラジカル(▪SO4-)等を用いた過硫酸法があります。難分解性なベンゼン等を含む有機化合物全般に適応が可能で、土壌掘削の必要がなく、小設備での工事が行え、経済的にもメリットがあります。ただし、土地が酸性になってしまうので使用しにくい土地があったり、酸化剤によって金属が腐食するために、建物などの金属製の構造物に影響がある可能性があります。

・バイオレメディエーションでの油浄化

バイオレメディエーションは、微生物の力で油を浄化する方法です。外部で培養した微生物を導入することにより浄化を⾏う「バイオオーグメンテーション」と、栄養剤と酸素を加えて浄化場所に生息している微生物を活性化することにより浄化を行う「バイオスティミュレーション」があります。

バイオレメディエーションは、微生物の状態によって油の浄化速度が異なってくるため、油の浄化期間が読みにくいというデメリットがあるものの、環境負荷が少ないことや、建物のある土地でも浄化が可能というメリットがあります。

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