土壌汚染の問題について考える

土壌汚染の問題について考える

 土壌汚染とは、工場等の事業活動にて使用された有害な化学物質やそれを含む排水等が地表面から浸透し、土壌に蓄積されている状態です。土壌汚染対策法では、人の健康被害の防止の観点から、定められた基準を超える有害物質が土壌中に検出された場合、”土壌汚染あり”と判断されます。人為的原因による土壌汚染は埋立てにおける有害物質が含まれていた土砂等の使用など人為的原因によるものもあります。また、全国各地の自然地層にもともと存在する重金属類(鉛、砒素、ふっ素等)による自然由来原因のものがあります。

土壌汚染の存在により、どのような問題が生じるでしょうか?まずは、人体への影響や心理的不安という健康上の被害が挙げられます。そして、土地利用の制限や資産価値の低下といった経済上の被害が生じる可能性もあります。ここで、それらがどのような問題であるのか、見ていきましょう。

①健康リスク

 土壌に含まれていた有害物質が人の体内に取り込まれること(摂取)により人の健康被害を生じるおそれがあります。土壌汚染対策法では、地下水を飲用するなどの地下水経由の摂取と、手についた汚染土壌や砂ほこりが口から入ってくるような直接摂取の二つの摂取経路を想定して、人の健康被害を防止することを目的としています。健康被害が生じるおそれ(健康リスク)の程度は、有害物質の有害性がどの程度高いかという点と、有害物質がどの程度体内に取り込まれたかという点の二つの要素で決まります。有害物質があることをもって健康リスクが生じるのではなく、その有害物質に暴露する機会があり、暴露する量(または程度)が有害性の発現に十分であったときに初めて健康リスクが生じるということです。

②不動産リスク、環境リスク

土壌汚染対策の措置として、多くの場合選択される措置が掘削除去です。

掘削除去は、小規模で数百万~、大規模な浄化や除去になると数千万~という費用になり、土地の所有者の経済的な負担が大きくなります。この土壌汚染の浄化コストが、土地価格に反映されてしまい、土地取引がしにくくなってしまうという問題があります。土壌汚染は、健康被害防止や環境問題のために防いでいくべき問題ですが、実は、健康被害で問題になるケースよりも、土壌汚染が土地価格の低下に大きく影響して、土地売買に影響することの方が身近な問題となっています。

掘削除去への偏重は、環境へのリスクを低減していく観点からも問題視されています。汚染された土壌を不適正に処理することによって汚染が拡散する問題も、土壌汚染対策法の課題となりました。不適正な処理事案が増えたことで、その被害が余計に広がる懸念が出てきたのです。法では土壌の搬出の規制や管理票の交付・保存の義務化することや、土壌の搬出に関する処理業に許可制度を新設するなど、対策が取られています。

 土壌汚染が生じることによる影響は、このほかにも悪臭などによる生活環境への影響や、農作物の飼育被害、生態系への影響などもあります。一度土壌汚染が生じてしまうと、土壌汚染の原因となっている有害物質が土壌中にとどまりやすく、長期にわたって影響が続くことが考えられます。土壌汚染を引き起こさないためには、問題点や公害についての知識を多くの人が学び、土壌汚染をより理解することも大切です。

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