土壌汚染の浄化工事(油汚染)バイオレメディエーション

油によって汚染された土壌浄化対策には、様々な方法があります。

今後の土地の用途・コスト・工期に一番適切な浄化方法を選択することが大切です。

 

バイオレメディエーションは、油による土壌汚染を浄化する手法の一つで、微生物によって油を分解して浄化するものです。環境負荷が小さく、建物を壊さなくても土壌汚染を浄化できるというメリットがあります。

 

〇土壌汚染の調査~土壌浄化を行うまでの流れ

 

①土壌汚染のボーリング調査

 土壌に油が漏れ出したことが判明したら、どの範囲まで汚染されたのかを調査する必要があります。油が表層部分のみを汚染しているのか、それとも地下深くまでしみ込み、地下水まで汚染しているのか、汚染の範囲が地下で広がっていないかなど、ボーリング調査を行って把握します。詳細調査の結果を基に、最適な土壌浄化対策方法を計画します。

 

 サイトの汚染状況に応じて、最も効果的で経済的な方法を、「不溶化・覆土・封じ込め・掘削・除去・入替等」から検討し、計画の立案を行ないます。また、役所対応や住民対応が必要なケースもあります。

 

②土壌浄化計画

 ボーリング調査の結果を基に浄化計画を立案します。土質や油汚染の広がり度合、建物の有無、予算や浄化にかけられる時間、地下水汚染の有無などから、最適な浄化工法を決めます。バイオレメディエーションが採用された場合は、この計画の段階で、製剤の使用量や注入間隔、注入方法が決められます。

 サイト毎に条件(油種、油分濃度、土質など)が異なるため、バイオレメディエーションで浄化ができるかどうかはそれぞれの現場によって違います。そのため、汚染された土壌を使って、あらかじめ浄化効果を確認するための試験を行う必要があります(トリータビリティ試験)。試験期間は、試験方法によって1週間~1か月程度かかります。トリータビリティ試験の結果、浄化可能であると判断できたら、現場での浄化の準備を始めて、適切な製剤の使用量、注入間隔、注入方法等を計画します。

 

③バイオレメディエーションによる土壌の浄化工法

 バイオレメディエーションによる土壌の浄化工法には、どのようにして微生物を土壌に送り込むかにより、いくつかに分けられます。

 

・ランドファーミング

 土壌汚染が比較的浅い場合に適用される方法で、汚染された土壌を掘りあげて一か所に山積みし、バイオ混合液を散布して土壌と混合します。

 土壌を直接確認することができるので、油臭や油膜を確認したり、油分濃度を確認するための分析に出したりと、浄化の進捗を簡単に確認できるというメリットがあります。

 ランドファーミングでは、定期的に水を撒いて撹拌します。微生物は、水に溶けた酸素、水に溶けた栄養(窒素、リン、カリ)を使うので、土壌の含水を保つ必要があります。乾燥した状態では、微生物が油を分解する力が衰えてしまいます。それから、微生物と油が接触することも大切で、そのためには、定期的な撹拌も欠かせません。

 一般的に、ランドファーミングは土壌と微生物を効率的に接触させやすいので、浄化が早く進むといわれています。

 ただし、土壌を掘りあげる必要があるため、建物がある場合には適用できませんし、掘りあげた土壌を仮置きするための敷地が必要となります。

 

・インサイトミキシング

 インサイトミキシングは、汚染された土壌を掘ったそのままの位置で、バックホウや柱状改良機などを使用してバイオ混合液と土壌を混合する工法です。土壌汚染が浅い場合に使用され、バックホウのバケットが届く範囲の深さまでであれば適用可能です。

 ランドファーミングと比較すると、汚染土壌を掘り上げる必要がなく、油の二次汚染を気にする必要がありません。インサイトミキシングも、ランドファーミングと同様に、建物の下の土壌汚染には対応できません。

 

・ロッド注入(ダイレクトプッシュ)

 ランドファーミングやインサイトミキシングでは到達しにくい深い場所の土壌浄化には、ロッド注入(ダイレクトプッシュ)が用いられます。

 ロッド注入では、ボーリングマシーンを用いて地中にロッドを挿入し、ロッドを引き上げながら、各深度にバイオ混合液を注入します。注入間隔は、土質によって異なり、水の浸透性が悪い土壌では、注入地点を多く 留守必要があります。

 バイオレメディエーションで使用する微生物は好気性なので、酸素が必要です。そのため、注入後、分解を促進させるためにバイオベンティングを行うこともあります。バイオベンティングとは、バイオ混合液を注入した後の穴に一定間隔で無孔管を差し込み、地上で各無孔管をブロワに配管、地中のガスを排気することによって、地中に酸素を導入します。

 排気されたガスを検知管などで測定すると、地中の状況が分かります。排気したガスに油臭がなくなり、ガスの測定結果が期待値となれば、浄化が進んでいる証拠です。

 

・井戸注入

 井戸注入とは、φ50mm程度の注入井戸をつくり、井戸からバイオ混合液を注入する工法です。高低差による自然圧力により浸透させる自然浸透と、井戸にふたをして圧力をかけて入れる圧力注入があります。ボーリングマシンが入れる場所であれば井戸を設置できるので、操業中の工場などでも浄化を行うことができます。

 

④土壌浄化のモニタリング

 バイオレメディエーションでは、土壌を採取し、浄化の進捗をモニタリングします。土壌や地下水のサンプルを採取し、分析を行ってその変化をモニタリングします。項目は、油分濃度(TPH)、油臭・油膜、含水率、pH、窒素・リン濃度、全微生物数などです。

 窒素とリンは、微生物が油を分解するのに必要な成分です。残っている油の量に対して必要な窒素・リンの量が少なくなってきたら、栄養剤を追加します。

 地下水モニタリングでは、土壌から浸透した有害物質が地下水に影響を与えていないかを確認します。地下水の質の変化をモニタリングすることで、環境への悪影響を最小限に抑えることができます。

 モニタリングを定期的に行い、油分濃度が目標値を達成したら、浄化完了となります。

オンライン相談はこちら